令和6年診療報酬改定 陽子線治療の保険適用が拡大

 2024年2月に厚生労働省は『令和6年度診療報酬改定』の内容を公表し、6月から早期肺がん(I期~IIA期)の陽子線治療が、新たに保険適用対象となることが明らかになりました。
 

従来の8つの疾患に加えて早期肺がん(I期~IIA期)が保険適用の対象に

 陽子線がん治療は放射線治療の一種です。陽子線は一般的なX線に比べて副作用が少なく、患者さまのQOL(生活の質)が高い治療法として知られています。2016年に陽子線治療が得意とする小児腫瘍(限局性の固形悪性腫瘍)が初めて保険収載され、その後、2018年、2022年の改定でも保険適用の疾患が増え続けています。2024年からは、ステージI期からIIA期の早期肺がんが新たに加わり、合わせて9つの疾患が保険適用対象となります。

images
※同じ部位でも腫瘍の大きさや転移の有無などの条件によって、保険対象とならない場合があります。

 保険適用が認められると、治療によって病院が得る診療報酬が定められます。陽子線治療の診療報酬は治療部位により異なり、前立腺は160万円、その他の部位は237.5万円です。患者さまは、個々の一部負担割合に応じて1割もしくは3割を負担します。また、高額療養費制度など自己負担額を軽減できる制度の対象となり、費用の面で陽子線治療が受けやすくなります。
 

保険適用は拡大している

images
 
 

保険適用と治療件数

 保険適用が拡大した2018年を境に陽子線治療件数が顕著に増えています。

images

 そもそも、日本で公的医療保険の適用範囲はどのように決められているのでしょうか。

 厚生労働省は、先進性の高い医療技術のうち、保険給付の対象とすべきかどうかを評価する必要があるものについて、まずは先進医療として承認をします。先進医療は、厚生労働省が指定した医療機関でのみ実施することができ、先進医療に係る費用は全額自己負担(民間のがん保険等でカバーされる)となります。一般保険診療と共通する部分(診察・検査・投薬・入院料等)の費用については全額保険給付されます。

 厚生労働省は先進医療を行う医療機関から定期的に報告を受け、有効性や安全性が科学的に確認できたものが公的医療保険の適用対象となります。今後の陽子線を含む粒子線治療の保険適応にあたっては、既存の治療法に対しての優位性が文献や臨床試験等の客観的評価により立証されているかどうかが議論のポイントになります。  
 

令和6年度診療報酬改定における評価

 今回、保険適用となった早期肺がんの陽子線治療について、厚生労働省は『令和6年度診療報酬改定の概要(全体概要版)令和6年3月5日版』の中で、「既存のX線治療等と比較して生存率等の改善が確認された」疾患であるとしています。

 食道がんについては今回は保険収載が見送られましたが、これから新しい症例を集めて仮説を検証する「前向き研究(例えば心肺毒性の低減を評価する)」を勧められており、今後も陽子線治療の保険適用対応は増え続けることが予想されます。

 

関連情報:陽子線治療とは

 

to Page top